中古住宅を購入するときに「リフォームも一緒にしたい」と考える人が増えています。しかし、購入と工事を同時に進めた場合、住宅ローン控除の申請でどのように書けばよいのか迷う人も少なくありません。
実は、中古住宅とリフォームを同時に行う場合でも、一定の条件を満たせば住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用できます。ポイントは、「どこまでが住宅の取得費」「どこからがリフォーム費用」として認められるかを正しく区分することです。
この記事では、制度の基本から確定申告での具体的な書き方、提出時の注意点までを整理しました。難しい専門用語は国税庁などの一次情報をもとにわかりやすく説明します。購入とリフォームをセットで考えている人が、安心して申告を進められるよう解説していきます。
中古住宅の購入と同時にリフォームする場合の住宅ローン控除の書き方(全体像)
中古住宅を購入してすぐリフォームを行うケースは、資金計画や税制面での判断が難しい場面です。まず全体像をつかむことが、控除申請を正しく進めるための第一歩になります。ここでは、制度の仕組みと流れを順を追って整理します。
この記事でできること(ゴールと想定読者)
この記事では「中古住宅の購入と同時にリフォームをしたいが、住宅ローン控除の申請で迷っている」という人を対象にしています。具体的には、控除の対象範囲や申告書の書き方、必要書類を理解し、自分のケースで適用できるかを判断できるようになることを目指します。
「同時にリフォーム」の定義と対象パターン
中古住宅を「購入と同時にリフォーム」するとは、売買契約とリフォーム契約をほぼ同時期に行い、入居前に工事を完了させるケースを指します。ただし、住宅ローン控除の対象になるかは、工事費が住宅の取得費と一体として扱えるかどうかがポイントです。
必要になる書類と用語のかんたん整理
控除申請では「住宅借入金等特別控除申告書」「年末残高証明書」「登記事項証明書」などの書類を使用します。これらの名称は難しく感じられますが、いずれも住宅を取得・借入した事実を証明するための公的な書類です。
まず押さえる全体フロー(購入・工事・入居・申告)
購入から申告までの流れは「①売買契約→②リフォーム契約→③工事完了→④入居→⑤確定申告」という順です。つまり、控除の適用を受けるには、入居後に確定申告で必要書類を提出する必要があります。
・中古住宅とリフォームの契約が「同時期」であることが重要。
・入居が完了してから初年度の確定申告を行う。
・購入費と工事費を明確に分けておくと、後の書類作成がスムーズ。
例えば、築25年の戸建てを2,000万円で購入し、入居前に500万円の耐震・断熱リフォームを行う場合、住宅ローン控除は「住宅取得と一体のリフォーム」として申告可能です。工事内容と契約日をきちんと記録しておくことが大切です。
- 中古購入+リフォームは、契約時期と工事内容で判断される
- 控除を受けるには入居後の確定申告が必須
- 書類は売買・工事・借入の3種類を区別して保管
- 工事内容が住宅の価値向上に関係していることが前提
住宅ローン控除の基本(中古住宅×リフォーム)
次に、住宅ローン控除そのものの仕組みを整理しましょう。中古住宅とリフォームを同時に行う場合でも、制度の基本を理解しておくことで申告時のミスを防げます。
住宅借入金等特別控除とは(仕組みと期間)
住宅ローン控除とは、住宅を取得した人が借入金の年末残高に応じて所得税の一部を控除できる制度です。控除期間は原則13年で、初年度は確定申告、2年目以降は年末調整で行います。
適用要件:中古住宅の要件・床面積・築年数・適合条件
中古住宅の場合、床面積50㎡以上で、かつ築年数が一定の基準を満たす必要があります。2022年以降は耐震基準に適合していれば築年数要件が緩和され、旧耐震でも証明書を取得すれば対象となるケースもあります。
控除額の考え方:控除率・上限・計算の流れ
控除額は、年末のローン残高×控除率(原則0.7%)で計算されます。上限額は住宅の種類や省エネ性能によって異なりますが、中古住宅でも最大で455万円の控除を受けられる可能性があります。
築年数要件の緩和と耐震基準適合の確認ポイント
築古住宅では、耐震基準適合証明書や住宅性能評価書などで耐震性を証明することが必要です。証明書を発行できるのは建築士や指定機関で、売買前に取得しておくと控除手続きがスムーズになります。
よくある誤解(名義・居住要件・タイミング)
控除対象は住宅ローンの契約者本人であり、登記名義と一致している必要があります。居住開始が遅れたり、転勤で住まない場合は控除が受けられないこともあるため注意しましょう。
項目 | 主な要件 |
---|---|
床面積 | 50㎡以上(共有部分含む) |
築年数 | 木造20年以内/耐震基準適合なら制限なし |
控除率 | 年末残高の0.7% |
控除期間 | 原則13年間(条件により10年) |
入居期限 | 取得後6か月以内に居住 |
例えば、築28年の木造住宅でも、リフォーム前に耐震基準適合証明書を取得すれば控除対象になります。これを知らずに証明書を取らず契約を進めると、後から控除が受けられないというケースが少なくありません。
- 住宅ローン控除は「年末残高×0.7%」が基本計算式
- 中古住宅でも耐震基準を満たせば築年数制限を超えて適用可
- 登記名義・居住開始時期の条件を満たすことが前提
- 証明書類の準備が控除可否を左右する
「同時にリフォーム」と控除の併用可否
中古住宅を購入するときに、同時にリフォームを行う場合は「住宅ローン控除」と「リフォーム減税(増改築等特別控除)」を併用できるのかが気になるところです。ここでは、その条件と仕組みを整理していきます。
物件+リフォーム一体型ローンの考え方
金融機関によっては、中古住宅の購入資金とリフォーム費用をまとめて借りられる「一体型ローン」があります。この場合、住宅の取得費と改修費が一つの借入契約として扱われるため、原則として住宅ローン控除の対象になります。
併用できるリフォーム減税の種類と範囲
住宅ローン控除と併用できるリフォーム減税には、省エネ改修や耐震改修などがあります。ただし、同じ工事費を両制度で重複して控除することはできません。工事内容が明確に分けられていることが前提です。
重複計上NGの線引き(対象工事・費用区分)
例えば、浴室改修やキッチン交換などは住宅ローン控除の「取得費」に含められますが、バリアフリー化や省エネ設備改修はリフォーム減税の対象とするほうが有利な場合があります。どの制度で扱うかは税務上の区分が重要です。
契約日・支払日・居住開始日の扱い
控除の適用は、契約日・支払日・居住開始日の順序で確認されます。特に「入居日」がずれると、初年度の申告で適用外になることもあるため、引き渡しや工事完了日を記録しておくことが欠かせません。
工事請負契約と金消契約の時系列の注意点
売買契約(不動産)と工事請負契約(リフォーム)、そして金融機関との金銭消費貸借契約の順序が異なる場合、控除の対象が分かれます。つまり、契約順を誤るとリフォーム費用が「別ローン扱い」とされるおそれがあります。
・物件取得と工事費を同じローンで借りると控除対象になりやすい。
・契約順(売買→工事→借入)を意識して記録する。
・重複控除は不可。内容によってどの制度を使うか選ぶ。
例えば、工事請負契約が物件引き渡し後になってしまった場合、その費用は「住宅取得費」として扱えず、別のリフォームローン扱いとなります。このように、契約タイミングの1週間の差が控除の可否を分けることもあるため注意が必要です。
- 同時リフォームは一体型ローンで申請するのが基本
- 住宅ローン控除とリフォーム減税の重複はできない
- 契約順と日付の整合性が最も重要なチェックポイント
- 工事内容ごとに制度の対象を判断する
初年度の確定申告:具体的な書き方手順
住宅ローン控除を受けるためには、入居した翌年に確定申告を行います。ここでは、中古住宅+リフォームの場合の書き方と注意点を、初めての人でも分かるように順を追って説明します。
必要書類チェックリスト(入手先つき)
確定申告に必要な主な書類は次の通りです。売買契約書・工事請負契約書・登記事項証明書・住宅ローンの年末残高証明書・耐震基準適合証明書(または住宅性能評価書)などです。書類の大半は金融機関や法務局で入手できます。
e-Taxと書面提出の選び方と準備
電子申告(e-Tax)を使えば自宅から申請できますが、マイナンバーカードとICカードリーダーが必要です。紙で提出する場合は税務署窓口または郵送でも構いません。初年度は添付書類が多いため、書面提出を選ぶ人も少なくありません。
申告書セットの構成と添付方法
国税庁サイトからダウンロードできる「住宅借入金等特別控除の明細書」を中心に、確定申告書A・添付書類台紙をセットで提出します。工事契約書や登記事項証明書はコピーで提出可能です。
(特定増改築等)計算明細書の記入ポイント
リフォームを含む場合は、「特定増改築等住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を使用します。購入費と工事費を合算した借入金残高を記載し、控除率0.7%を乗じて計算します。書き間違いを防ぐため、金融機関発行の残高証明書を必ず照合しましょう。
中古取得+リフォームの入力例(よくある分岐)
例えば、物件価格2,000万円、リフォーム費用500万円、合計2,500万円を借入した場合、「住宅取得費」として2,500万円を記載します。ただし、工事が入居後に完了した場合はリフォーム部分を除外する必要があります。
書類名 | 主な入手先 |
---|---|
売買契約書・工事請負契約書 | 不動産会社・施工業者 |
登記事項証明書 | 法務局 |
住宅ローン年末残高証明書 | 金融機関 |
耐震基準適合証明書 | 建築士・指定検査機関 |
源泉徴収票 | 勤務先 |
例えば、登記事項証明書の「家屋番号」や「床面積」の数字を転記する際、少数点以下を記載してエラーになる例もあります。書類の数字はそのまま転記し、単位を省略しないことがポイントです。
- 初年度は必ず確定申告で手続きする(年末調整では不可)
- 添付書類の原本・コピーを混在させない
- 工事費を合算して記載するかは「入居前完了」が鍵
- 書類の数字・日付の誤記が最も多いトラブル
2年目以降の年末調整と毎年の流れ

住宅ローン控除は初年度だけでなく、2年目以降も継続して適用されます。ここでは、年末調整での手続き方法や注意点、借換えや繰上返済などのケースも含めて流れを整理します。
会社員が年末調整で行う手続き
会社員の場合、2年目以降は確定申告を行わずに勤務先の年末調整で控除を受けられます。年末に税務署から届く「住宅借入金等特別控除申告書」と金融機関発行の「年末残高証明書」を提出すれば、自動的に控除額が反映されます。
追加工事・繰上返済・借換え時の対応
追加のリフォーム工事を行った場合、その費用は新たな控除対象にはなりません。繰上返済や借換えを行った場合は、残高や期間の変更を翌年の申告書に反映させる必要があります。特に借換えでは、新ローンの契約日と旧ローンの完済日を確認しましょう。
住宅借入金等特別控除申告書の扱いと保管
この申告書は13年分まとめて税務署から送付されます。年度ごとに1枚ずつ使用し、控除内容を転記する仕組みです。紛失すると再発行が必要になるため、確定申告書類と一緒に保管しておきましょう。
年末残高証明書・控除証明書の管理
年末残高証明書は、ローン残高を証明する重要な書類です。住宅ローン控除額はこの数字をもとに算出されます。複数の金融機関で借入している場合は、それぞれの証明書を合算します。
住民税への反映スケジュール
住宅ローン控除による所得税の控除しきれなかった分は、翌年度の住民税から減額されます。反映までには数か月かかるため、控除額の変動を確認する際は市区町村の通知書をチェックするとよいでしょう。
・税務署から届く控除申告書を会社に提出
・年末残高証明書は毎年新しいものを使用
・借換え・繰上返済時は翌年分から反映
・住民税減額は翌年6月以降に反映
例えば、12月に繰上返済を行った場合、翌年の控除額は返済後の残高に基づいて計算されます。つまり、返済時期が早いほど翌年の控除額が少なくなる可能性があるため、返済のタイミングも考慮する必要があります。
- 2年目以降は確定申告不要、年末調整で処理
- 控除書類は年度ごとに1枚ずつ使用する
- 借換えや返済の変更は翌年の控除額に影響
- 住民税への反映は翌年度にずれ込む
よくあるつまずきと回避策(トラブルシュート)
中古住宅とリフォームを同時に行うケースでは、契約や工事のタイミング、書類の不備などで控除が受けられない事例が少なくありません。ここでは、代表的なトラブルとその防止策を紹介します。
工事内容が要件に合わないケース
住宅ローン控除の対象となる工事は「居住部分の改修」が前提です。ガレージ新設や外構のみの工事は対象外になります。工事契約時に見積書を細分化し、対象となる工事とならない工事を明確にしておくことが大切です。
契約や支払いタイミングのズレによる不適用
契約日や支払日が入居後にずれると、リフォーム費用が「別工事扱い」とされることがあります。控除の対象になるには、入居前に工事が完了し、住宅として使用できる状態であることが条件です。
中古住宅の耐震・登記関係の不足対応
耐震基準適合証明書がない、登記簿上の床面積が不足しているなどの理由で控除が受けられないケースもあります。登記内容が現況と異なる場合は、司法書士や建築士に相談し、必要な補正を行うのが安全です。
共有名義・ペアローンの注意点
夫婦で住宅ローンを組む場合、登記持分に応じて控除額を分ける必要があります。共有割合が実際の借入額と異なる場合、どちらか一方が控除を受けられなくなる可能性もあります。
補助金との関係(課税・併用・返還条件)
リフォーム補助金を利用した場合、その補助金が「所得」とみなされることがあります。また、補助金を受けた部分の工事費は住宅ローン控除の対象外になるため、領収書の区分を明確にしておくことが重要です。
つまずき例 | 原因と対処法 |
---|---|
工事が居住用以外 | 居住部分面積を明確にして契約書へ記載 |
契約日が入居後 | 引渡し前に工事契約・完了を済ませる |
耐震証明書なし | 建築士に依頼して証明書を取得 |
補助金併用 | 対象外工事分を明示し、重複控除を避ける |
例えば、補助金で50万円を受けた場合、その金額分は控除計算から除外しなければなりません。控除額を誤って申告すると、後で修正申告が必要になることもあります。公的機関のガイドラインを確認しておくと安心です。
- 契約・工事・入居の順序を必ず記録する
- 工事内容の範囲を見積書で明確化する
- 耐震・登記に不備がある場合は早めに相談
- 共有名義・補助金は税務上の扱いに注意
費用最適化:補助金・減税・ローンの組み方
中古住宅の購入とリフォームを同時に行う場合、費用の内訳やローンの組み方次第で、実質的な支払総額が大きく変わります。ここでは、補助金制度や減税、ローン設計を組み合わせて、負担を軽減する方法を紹介します。
代表的な補助金の探し方と申請の流れ
代表的な補助金には「こどもエコすまい支援事業」「長期優良住宅化リフォーム推進事業」「自治体独自のリフォーム助成金」などがあります。国の補助金は国土交通省、自治体の補助金は各市区町村の公式サイトで確認できます。
見積書の書式と費用の分け方(税務で困らないコツ)
リフォームの見積書では、住宅部分と付帯設備(外構や車庫など)を分けて記載することが重要です。これにより、住宅ローン控除や補助金の対象外となる部分を明確にできます。税務署への説明もスムーズになります。
住宅ローンとリフォームローンの選び方
一体型ローンを利用できない場合、リフォーム専用ローンを別に組む方法もあります。ただし、住宅ローン控除は「居住用住宅を取得するための借入金」に限られるため、リフォームローンは控除対象外となるケースが多い点に注意が必要です。
【フラット35】リノベ等の制度活用
住宅金融支援機構が運営する【フラット35】リノベは、中古住宅とリフォームを一体で借り入れる場合に適した制度です。金利優遇が受けられるほか、耐震・省エネ性能を高める工事にも対応しています。審査には設計内容の確認や工事完了報告が必要です。
総支払額を下げるための実務的ポイント
ローンの金利差だけでなく、補助金の入金時期や減税の還付時期を踏まえて資金計画を立てることが大切です。例えば、補助金の受給は工事完了後数か月かかる場合が多く、つなぎ融資を利用するケースもあります。
・国と自治体の補助金を組み合わせる
・見積書の工事項目を細かく分けて管理
・フラット35リノベを検討する
・還付や入金の時期を踏まえて資金繰りを調整
例えば、東京都のリフォーム助成金を利用しつつ、国の省エネ補助金を併用することで、工事費の一部を最大で100万円以上軽減できるケースもあります。制度ごとに申請期限が異なるため、スケジュールを早めに確認しておくと安心です。
- 補助金は国・自治体それぞれに制度がある
- 見積書を細分化して税務・補助金対応を両立
- 一体型ローンなら控除を最大限活用できる
- フラット35リノベで金利優遇を受けられる場合も
- 還付・補助金の時期を考慮して資金繰りを組む
まとめ
中古住宅を購入して同時にリフォームを行う場合、住宅ローン控除の対象になるかどうかは、契約の時期や工事内容、そして書類の整備状況によって大きく変わります。控除の可否は「居住前に工事が完了しているか」「住宅の取得と一体として認められるか」が判断の基準です。
また、リフォーム減税や補助金を活用することで、実質的な費用を抑えることも可能です。ただし、複数制度を利用する際には、重複申請や対象外工事の扱いに注意が必要です。契約順序や証明書類を整理し、制度の目的に沿った申告を行うことが大切です。
最終的には、「制度を正しく理解し、手続きを計画的に進めること」が、後悔しない住まいづくりにつながります。本記事をきっかけに、国税庁や国土交通省など公的な情報源を確認しながら、自分に合った方法で安心して手続きを進めてください。
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